4

  やっとわかった、君にあげるもの。

  僕をあげよう。君は僕のみちづれになって、いっしょに生きていこう。
  君が自身の一生を歩むのがつらいのなら、僕の一生を2人で歩めばいい。僕はそういう魔法が使えるんだ。僕だって、こうみえてもいろんなことができるんだよ。だからもっともっといろんなことできるようになるために勉強してるんだ。
  これはひとつめの魔法。君と僕の運みたいなものを分け合うことができる。もとはスティーリアセリフィンの特別な力で、そっちはもうちょっと内容も違うらしいけど、僕の一族、セルティクスの召喚士がつかうのは相手と自分の運命を魔法で分け合うんだって。これはとてもとても大きな魔法だけど、今すぐにだってできるんだ。一生に一度、一人だけにしか使えない特別なものだから。僕の声を聞いてくれる神様にお願いをすればいい。僕がエルヴィスバトルの血統を持つ限り、この魔法はそれ以外の何ものも必要としないんだ。

「マリアル。ふたつめのおくりものだよ。僕を見て」
 
  自分の名前を聞いて、君はいつものようにその視界に僕をとりこんだ。僕は穴の横に座って魔法の言葉を口にする。指先でなめらかな形をなぞる。  ねえマリアル。僕は君の空虚を埋めてあげたかったんだ。…-----けれど
  それが僕らの幸せだと思ってた僕は、君の幸せのことを考えなかったとでも言うのだろうか。僕は後に受ける罰は、このときの僕の傲慢が原因だったのだろうか。
 ねえマリアル 教えて
 僕は間違ったの?
 そうだ、僕らが生きていくには”身の程知らず”も十分悪いことなんだ。 -----…僕らはまだ子供だった。

 



 

 

  そうして、僕が9歳のとき、僕たちはひとつの道をいっしょに歩きはじめる。その魔法から後、彼女は何日も何日も眠り続けた。僕は毎日彼女の様子を見に来た。不安は無かった。信じていたから。
  半月がたった頃、僕はいつものように彼女のところに来た。そしてその小さな結界に足を踏み入れたとき

「オルフェ、おなかがすいたよ」

不意に聞いた君の声。僕はしばらくつっ立って君の顔を見た。

「うん。今日は−−−いっぱい、もってる」

「そっか」

  君は満面に笑みをうかべて僕を見上げた。
  僕はこんな笑顔を君にみせたことあったかな?理由なんかどうでもいいや。君が笑ってるならそれでいいじゃないか。ねえ、マリアル。


  その夜、僕ははじめて心から神様にお祈りをした。


< ・・・5へ・・・ >